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管理人氷櫻音羽の自己満足小説の置き場所。不定期・亀足更新です。
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あの日、闇染零と名乗った闇から、右目に『厄災の眼』を受け継いでから月が、三度空に昇った。

その間、母は、屋敷の奥の部屋から、俺を一歩も外に出そうとはしなかった。
「柳苑?その…右目の様子はどうです」
月明かりが射すその部屋に母は、そっと襖を引いて入ってきた。
「…」
どう、と問われてももう、俺の眼は既に『私』のものではなく彼の…俺のものでどうしようともこの眼はどうにもならない。
返答のしようもない。

無言で、母を見た。

あの日、眼を受け継いだ日、母は俺の『厄災の眼』を見るなりその眼を包帯で隠しそして、泣いた。

先天的に『厄災の眼』を持って生まれた子供は、その場で殺される。

では、後天的に『厄災の眼』を得てしまった者は?

前例は、無い。

しかし、『厄災の眼』は、忌み嫌われるもの。
一族に『厄災』を呼ぶもの。
考えずとも、その先は想像できる。

死しか、其処にはない。

しかし、昨日まではそんなものを持たない我が子だったのだ。
そうやすやすと、母は俺を殺す。という選択を出来る筈など無かったのだ。

右目を隠した包帯を解きながら、俺に語りかけてくる。
「父上には、貴方の眼のことを話していません…。亜桜の家は仮にも夜を織り、奉る一族の長です…まさか、嫡子に『厄災の眼』を…」
「母上」

俺は、母の言葉を遮る。
そして、月明かりの中で、一層病的に見える腕を、持ち上げ襖の向こうを指差した。

赤い着物に、丁寧に染め描かれた蝶が袖が広がると同時にはらりと舞う。

母が、俺が指差した先を見つめ、凍りつき、震える細い声で泣いた。
「あ…貴方…」

其処には、驚愕の表情を浮かべた父親と、動けなくなっている母親。

そして、驚くほど冷たい瞳でその光景を見据える俺が居た。





――――滅んでしまえばいい。
こんな、閉ざされた一族など。
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