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管理人氷櫻音羽の自己満足小説の置き場所。不定期・亀足更新です。
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暗く、重い闇がのしかかって来た。

幼い『私』には、其れが恐ろしく、そして、懐かしく、親しみのあるものだった。

家の、縁側。夜の闇が支配する場所。
月明かりすら、届かない。

そこで、『私』は声を聞いた。

一族への、恨み。憎しみ。

そして、手に入れた。

黄金の眼。瞳に浮かぶ紅の十字。
一族が『厄災の眼』と呼ぶもの。

闇から伸びる、白い手は、『私』の右目に指を伸ばし、眼球に触れる。
氷のように、其れより冷たい指先で。

「恐れは無いのか、餓鬼」
闇は、笑みを含んだ声で問うた。

恐れ・・・。
そんなものは、微塵も感じなかった。
眼球に触れてくる、その冷たさが、心地よかった。

無言の『私』の闇は、また、くつくつと笑い、「そうか」と独りごちた。

そして、そのまま触れた指に力を込め、眼球を、抉り出した。

「っ・・・!!」

本来其処に走るであろう痛みの、半分以下の痛みが、走る。
幼い『私』でも、声を詰めれば耐えられる。そんな痛みだった。

闇から伸びる、死人色の手には視神経がついた『私』の眼球だったものが、転がる。

深い青の虹彩が、こちらを見ていた。

空洞の右目。
其処に、闇は掌をかざす。
「これで、餓鬼。お前は俺の後継者だ。・・・名は、なんと言う?」

「『私』は・・・亜桜柳苑。・・・眼を、継いだら、『私』は『私』を棄てて、『俺』(貴方)になる・・・。貴方の名を、教えて欲しい」

闇は、くっ。と声を詰めて笑うと、小さく答えた。
「・・・名・・・もう随分長く名乗ってないな・・・。俺は・・・闇染零。そう、名づけられた」

その言葉ともに、右目に激痛が走った。
まるで、熱した鉄の塊を打ち込まれたような、熱さと、刀で貫かれたような、痛み。
「あああああっ!!」

声は、夜闇を裂き、響いた。


声を聞きつけ駆けつけた、母が見たものは、醜く引き攣れた右目と、『厄災の眼』と呼ばれる、黄金とくれないの瞳。

「・・・柳苑・・・これは一体・・・」








そして、母はその瞳を隠し・・・そして・・・。




それは、月が赤く輝く、秋口のこと。
『私』が『私』を棄てた日のこと。
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